なかにし礼さんが、集団的自衛権の閣議決定がなされた事に対して、
書かれた詩を、ここに掲載させていただきます。
(写真は矢頭智剛撮影)
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なかにし礼 作
『平和の申し子たちへ! 泣きながら抵抗を始めよう』
二〇一四年七月一日火曜日
集団的自衛権が閣議決定された
この日 日本の誇るべき
たった一つの宝物
平和憲法は粉砕された
つまり君たち若者もまた
圧殺されたのである
こんな憲法違反にたいして
最高裁はなんの文句も言わない
かくして君たちの日本は
その長い歴史の中の
どんな時代よりも禍々(まがまが)しい
暗黒時代へともどっていく
そしてまたあの
醜悪と愚劣 残酷と恐怖の
戦争が始まるだろう
ああ、若き友たちよ!
巨大な歯車がひとたびぐらっと
回りはじめたら最後
君もその中に巻き込まれる
いやがおうでも巻き込まれる
しかし君に戦う理由などあるのか
国のため? 大義のため?
そんなもののために
君は銃で人を狙えるのか
君は銃剣で人を刺せるのか
君は人々の上に爆弾を落とせるのか
若き友たちよ!
君は戦場に行ってはならない
なぜなら君は戦争にむいてないからだ
世界史上類例のない
六十九年間も平和がつづいた
理想の国に生まれたんだもの
平和しか知らないんだ
平和の申し子なんだ
平和こそが君の故郷であり
生活であり存在理由なんだ
平和ぼけ? なんとでも言わしておけ
戦争なんか真っ平ごめんだ
人殺しどころか喧嘩(けんか)もしたくない
たとえ国家といえども
俺の人生にかまわないでくれ
俺は臆病なんだ
俺は弱虫なんだ
卑怯者(ひきょうもの)? そうかもしれない
しかし俺は平和が好きなんだ
それのどこが悪い?
弱くあることも
勇気のいることなんだぜ
そう言って胸をはれば
なにか清々(すがすが)しい風が吹くじゃないか
怖(おそ)れるものはなにもない
愛する平和の申し子たちよ
この世に生まれ出た時
君は命の歓喜の産声をあげた
君の命よりも大切なものはない
生き抜かなければならない
死んではならない
が 殺してもいけない
だから今こそ!
もっともか弱きものとして
産声をあげる赤児のように
泣きながら抵抗を始めよう
泣きながら抵抗をしつづけるのだ
泣くことを一生やめてはならない
平和のために!
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■人物略歴 ◇なかにし・れい
1938年中国・牡丹江市生まれ。「石狩挽歌」「北酒場」など数々のヒット曲を作詞。小説では98年「兄弟」、99年「長崎ぶらぶら節」(直木賞)、2001年「赤い月」
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私は思い出します。
2011.3.11以後、泣きながら子どもたちに詫びた悲痛な日々を・・
2011.6.11以降、毎夜、毎夜、測定室への道を泣きながら、自転車に乗って走った事を・・
そして今も・・解決できない地球規模の汚染を続けながら、再稼働を許す人たち・・
無念の涙を無駄にはしまい・・
そんな想いが詞に重なって、
私も産声をあげる赤子のように、泣きながら抵抗をしよう!と思いました。
2014年7月17日
馬場利子記