2020年8月19日、乳歯保存ネットワーク(http://www.hahainc.jp/)代表、岐阜環境医学研究所所長 松井英介先生が亡くなられて、
まだ、18日。
とても長い時間が経ったように感じられます。
私たち『静岡放射能汚染測定室』とのご縁は、2013年の第2回総会記念講演会に講師として来ていただいたことで、それまでにも増して、近しくお付き合いをさせていただきました。
放射性物質を人間が使うことへの警告や、
放射線医学の専門家として、低線量被ばくや内部被ばくの危険性を、深い怒りを持って語ってくださいました。
松井先生のご活躍は、皆さん、ご存じのとおりです。
8月19日(水)、英介先生のお連れ合い(和子さん)より、お送りいただいた松井先生の遺言を、
皆さまにもお伝えします。
最後まで、意識もはっきりとしておられ、遺言を書かれたのは8月15日。
眠るように旅立たれたそうです。
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親愛なる友だち、仲間のみなさんへ
コロナウイルスの感染拡大により、世界中が大きな試練に立たされています。
日常の行き来もままならなくなっています。みなさまはどうお過ごしでしょうか。
2011年3月11日フクシマ大惨事から、間もなく10年が経過しようとしています。
この大惨事をきっかけに、私はみなさんと知り合い、たくさんのことを教えられてきました。
とくにスイス・バーゼル研究所のDr.Markus Zehringer 、Dr.med.Martin Walterらの支援を受け、
乳歯中ストロンチウム90の測定を日本で始めることができたことは、何物にも代えがたい大きな歩みの第一歩です。
感謝しています。
しかしいま、私個人はストロンチウム90の影響と思われる病を抱え、闘病中です。
その病は、骨髄異形成症候群(MDS myelodysplastic syndrome)です。
この病は、広島・長崎の原爆数年後から被ばく者に見られるようになり増加していましたが、
日本で人類が経験した最大最悪の3.11原発事故以降、いま関東圏を中心に日本各地でMDSの患者さんの増加が指摘されています。
進行すれば白血病への移行もありうる難病「MDS」。
米国で開発された「ビダーザ」は、MDSの治療に大きな効果を発揮する、画期的な新薬として注目され、日本新薬では2011年3月に「ビダーザ」を発売しました。
私は2018年1月からビダーザを注射、治療を開始しました。
MDSは、その後約2.5年比較的良好な効果が期待できましたが、現在はもはや効果なく、
赤血球と血小板を週一回輸血し、血液の状態を整えているところです。
最近は免疫力の衰えから高熱が出るなど油断を許さない状態です。
私はMDSや白血病でゆっくり人を殺す人たちを、忘れてはならないし、免罪してはいけないと、
自らに言い聞かせています。
そこでお願いです。
私たち「はは測定所」では、バーゼル研究所で研修を受けた仲間を中心に、
日々、乳歯中ストロンチウム90の測定を進めております。
今後ぜひこの結果を、日本だけのものとせず、スイスをはじめ多くの国と共有し、
研究者たちの叡智と力で解析し、世界の未来世代のために生かしていただきたいと望みます。
(加えて遠くない将来、私が命を終えたときは、
私の歯と骨も、その取り組みに生かしていただけましたらうれしく思う所存です。)
2020年8月15日
核のない未来を願って
松井英介
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また1人、ご恩ある人、教えを乞うた人が旅立たれました。
世代間のバトンをどう繋くかは、いつも、
『私(私たち)にできることをする』
『諦めない』『忘れない』・・・
皆さんが共に在ってくださることに感謝して、松井先生の遺言をお届けしました。
2020年9月6日
馬場利子記