当測定室のアドバイサーで、元京都大学, 工学(系)研究科(研究院) 教務職員の河野益近さんは、福島原発裁判でも放射能汚染と甲状腺がんについて、証拠書面を書いて証言もしてくださっています。
現在も、放射能汚染と健康リスクについて、多くの論文を読み、
提言を続けてくださっていますが、今回、以下の小論文を送ってくださいました。
分かりやすい論文になっていますので、ご紹介します。
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『福島県の小どもの甲状腺異常と放射能汚染の関係について』(まとめ)
筆者:河野益近
<その1>
土壌汚染(舗装道路上にある106µm以下の微細土壌粒子)との関係
グループ化の基準レベルとして指定廃棄物の基準8,000Bq/kgと土壌改良資材等の基準400Bq/kgを採用し
(個人的な基準をきめると意図的だと思われるので、この国の基準を採用します)
8,000Bq/kgを超える市町村に住んでいる子どものグループ①と、
400超~8,000Bq/kgのグループ②と、400Bq/kg以下の③に振り分けます。
結果:10万人あたりの甲状腺異常(悪性ないし悪性疑い)
グループ① 29.8(対象市町村 3、対象者数 46,973人、発生数14人)
グループ② 28.1(対象市町村30、対象者数177,806人、発生数50人)
グループ③ 15.5(対象市町村25、対象者数 45,112人、発生数7人)
※子どもの甲状腺異常と放射能汚染の関係が少し見える気がします。
※福島県にある市町村の数は全部で59です。
対象市町村の合計が59にならないのは汚染データが1つ欠けているためです。
<その2> ・・・・・・・・・・・・・
福島県の小どもの甲状腺異常と各市町村の小中学校所在地付近の汚染レベルとの関係
基準レベルとしてチェルノブイリ原発事故の際に旧ソ連が採用したセシウム-137の汚染レベル1Ci/km2(37,000Bq/m2)と5Ci/km2(155,000Bq/m2)を採用することにします。
各市町村の小中学校所在地付近の土地汚染レベルのうち一番高い汚染レベルの学校を基準にしてグループ分けします。
グループ①5Ci/km2超(155,000Bq/m2超)
②1Ci/km2超~5Ci/km2(37,000超~155,000Bq/m2)、
③1Ci/km2以下(37,000Bq/m2以下)。
結果:10万人あたりの甲状腺異常(悪性ないし悪性疑い)
グループ① 35.1(対象市町村12、対象者数133,902人、発生数47人)
グループ② 17.4(対象市町村15、対象者数 86,447人、発生数15人)
グループ③ 14.9(対象市町村29、対象者数 47,130人、発生数7人)
※子どもの甲状腺異常と放射能汚染の関係がよりはっきりしますね。
※福島県にある市町村の数は全部で59です。
対象市町村の合計が59にならないのは汚染データが3つ欠けているためです。
2つはもともと存在していませんでした。残りの1つは私が記録を取り忘れたためです。
※小中学校周辺の土地汚染レベルは2011年11月1日換算です。
元データは文部科学省のホームページにあった汚染地図から読み取ったのですが(地図上から数値データを見ることができました)、現在はそのホームページは存在していません。
<最後に>日本で放射性物質を取り扱うにあたって適用される放射線管理区域を設定するための基準、
放射性Csで40,000Bq/m2をグループ化の基準としてみます。
これも土地汚染は各市町村の小中学校で一番汚染レベルの高い学校周辺の値を採用しています。
グループ①40,000Bq/m2超、グループ②40,000Bq/m2以下
<結果>:10万人あたりの甲状腺異常(悪性ないし悪性疑い)
グループ① 36.1(対象市町村27、対象者数171,926人、発生数62人)
グループ② 7.3(対象市町村29、対象者数 95,553人、発生数 7人)
※子どもの甲状腺異常と放射能汚染の関係がますますはっきりしますね。
※対象市町村の合計が59にならないのは上記その2と同じ理由です。
<結論>
放射性セシウムの汚染と甲状腺がんの発生は関係がないという論文もありますが、甲状腺がんを引き起こすと考えられている放射性ヨウ素の量と放射性セシウムの量はある程度の相関があると考えられます。
従って、福島で多く見つかっている子どもの甲状腺異常は福島原発事故と関係があることは間違いなさそうです。
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2022年2月19日記
#福島県の小どもの甲状腺異常と放射能汚染の関係